FM三重『ウィークエンドカフェ』2017年11月25日放送

今回のお客様は『NPO法人二見浦・賓日館の会の事務局長、山本直子さんです。
国指定重要文化財の賓日館は、伊勢神宮に参拝される賓客の休憩、宿泊施設として建てられました。
品格のある洗練されたデザインは、今見ても素晴らしく、日本の伝統美に触れることができます。
御殿の間、大広間など見どころがたくさんです。

治20年に建てられた賓日館

賓日館は明治20年に、伊勢神宮に参拝される皇族の方々のための宿泊施設として創建されました。
歴代の諸皇族の方々や、各界の要人の方にたくさんお泊りいただいたお宿でございます。

シャンデリアの下がった大広間は柱がない空間で120畳あります。
なかなかない空間ですし、写真映えする場所でもありますね。
大広間は昭和の初期に増築された部分で、もともとは鉄でできた重厚感のあるシャンデリアが下がっていました。
しかし戦争で徴収されてしまい、現在のシャンデリアは昭和44年に二見館の息子さんが結婚されるときに寄贈されたオーダーメイドのものです。
和の空間にシャンデリアはあまりないですよね。
訪れる方は、旅行で来られるご年配の方が多かったのですが、最近は外国人の方も非常に多く、またカップルや家族連れも増えてきました。
月替りで展示を変えたり、夏休みには家族向けのイベントも開催しているので、いろいろな層の方に来てもらっていると思います。
外国人は特に、建築に興味を持っているヨーロッパの方が多く、日本の美をここで感じてもらっているようです。

 

宮の文化の1つとして賓日館を感じて欲しい

この建物は、伊勢神宮と切り離しては考えられません。
神宮の文化の一つとしてとらえてほしいです。
伊勢神宮の式年遷宮を担当された監督さんが、賓日館の昭和の増改築を請け負ってくださったので、全国から腕の立つ大工さんが集まって、その方々の優れた技術や選びぬいた材をいたるところで見ることができます。
ちょっとしたところでも、凝った技術があるのでよく見てみてください。
「おじいちゃんの家に似ている」なんて声も聞きますが、一般の住宅に比べると、ちょっとずつ豪華な材料が使われていたり、一枚板などもたくさんあります。
比べてもらうと、その豪華さがわかると思います。

毎日こちらにいると、今の時期で、すでに寒くなってきています。
昔の日本建築は夏に合わせて作られているので、やっぱり冬は寒いですね。
それでも目の前に広がっている二見浦は、冬になると空気が澄み渡り、富士山が見える日が出てきます。
運が良いと夫婦岩の方に向かってもらうと、富士山が奥の方に見えるんですよ。
冬ならではの楽しみです。

 

建築の研究が縁で事務局長となった山本さん

私はもともと建築士で古建築の保存修復を専門に研究していました。
この建物は技術を使って建物の維持管理をしていかなければならないので、その関係でお声を掛けていただき、この職につき現在3年目。
賓日館は国指定の文化財となっていますので、直すにしても、適当にはできません。
今までやってきた自分の知識が役に立つので、計画を立てたり技法を考えたりしています。
この建物はやっぱり守って、みなさんに見てもらわないといけないので、雨漏りがあったら直す、シミなどもなるべく見えないようにと、気を使っています。

最近では結婚式の撮影をされる方が増えましたね。
使い方として、私たちが教えてもらうことも、とても多いです。
ロケーション撮影で、結婚式はもちろん、七五三や成人式にも使ってもらっています。
最近ではコスプレの撮影の希望者が増えました。
例のないことなので最初は迷ったのですが、やってもらうと新しい賓日館の活用の仕方を、逆に教えてもらうことができるました。
私たちの想像を超えた使い方をされているので、こちらとしてもいろいろなことにチャレンジしていきたいと思います。

大広間でも、コンサートや地域の人たちの発表の場など、イベントを開催しています。
コンサートにしても私たちではどうしても日本的なものを考えてしまいますが、現代のアーティストが夜にライブをしても、とても雰囲気が合います。
古いものだけでなく、新しいものにも活用できるような大広間になっていると思います。

 

掃除とお正月準備

大掃除が控えている今、年末の事を考えています。
天井を雑巾掛けして、柱から床から綺麗にしますので、お手伝いのシルバーさんと一緒に、何日もかけて掃除します。
年末に来ていただくと、私たちのそんな姿も見ることができます。
昔、ここが旅館として使われていた頃は、年末になると館内すべての障子を張り替えていたそうです。
今は、私たちだけではとてもできないので、業者さんにお願いしていますが、昔の人は本当に年末は大変だったんだなということがわかりました(笑)。

そしてお正月に向けて、館内をお正月仕様のしつらえに変えていきます。
この地方独特の一年中飾るしめ縄は特大の特注品のものを12月に交換し、こちらも特注品の特大の門松を飾り、お正月の装いにととのえてお迎えします。
またお正月には初釜を兼ねてお抹茶のふるまいも行います。
さらに『強者彩』による剣舞と和楽器の演奏会もありますので、ぜひ見ていただきたいと思います。

 

紙人形展『日本神話の神々』を開催中! その後はおひなさまイベントへ・・・

現在、阿部夫美子和紙人形展『日本神話の神々』を開催しています。
神話の世界を具体的な形で表す方は少ないと思いますが、阿部さんはずっとそういった物を作られてきて、ひとつひとつ装飾もご自身で作られています。
細かい細工もあり、神話の世界を垣間見てもらうことができると思います。

そして賓日館の玄関の横にはもう、お雛様が飾られています。
来年の『おひなさま巡りin二見』の準備が始まっているんです。
来年の賓日館のおひなさまは、ウェディングケーキのような台の上で真っ白なドレスを着ています。
お内裏様はタキシード。
ワルツを踊っているようですよ。